第12回

みずほのシステムトラブル
工学コミュニケーションの基礎(EE0

黒田 聡

  

 エンジニアは複雑なシステムに携わります。作り上げたシステムは自身の手を離れてから長く、たくさんの人々によって使われ続けます。同時に、組織人としての責務と公衆の要求の両立を要請されます。工学倫理を学ぶ目的は、これらが組み合わさった状況において、コンフリクトを調和させていく道を主体的に考えられるようになることです。
 もの作りに携わるエンジニアは、工学倫理が絡む課題に常に直面します。最適解は、エンジニア自身が、ステークホルダーとのコミュニケーションを積み重ねて作り上げるものです。情報を集めて整理して分析する能力、客観的事実を伝える表現術、リテラシーを変容させる伝達技法、説得し態度変容を引き出すシナリオを構成する能力など、工学コミュニケーションで学んだことを駆使して取り組んでみましょう。

実習課題:システム統合プロジェクトの立ち上げ提案書のストーリー作成

EE04実習-200624.docx

EE04_はじめての工学倫理_p132-135_p206-2151.pdf

第11回

エキスポランド・ジェットコースター事故
工学コミュニケーションの基礎(EE0

黒田 聡

  

 エンジニアの仕事には、リスクを利用者に理解していただくように努め、製品や技術が自分の手を離れてからも安全に利用できる状態が維持されるように利用者に働きかけることが含まれます。ここでは、読み手の正常性バイアスを取り除くためのコミュニケーションが求められます。
 そのためには、ルールを守る意識だけでなく、想像力が必要です。また、個人の業務を完遂するだけでなく、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて倫理を全うする働きかけが必要です。ギャップを埋めるストーリーを考えて、コミュニケーションに取り組みましょう。

実習課題:添付文書改善提案書のストーリー作成

EE03実習-200617.docx

EE03_はじめての工学倫理_p082-085.pdf

第10回

三菱自動車リコール隠し事件
工学コミュニケーションの基礎(EE0

黒田 聡

  

 エンジニアの仕事にはリスクの程度を推し量ったり製品安全を確保することが含まれ、客観的な指摘やリスクの可視化を業務として担う機会が少なくありません。ここでは、読み手の偏見や先入観を取り除くためのコミュニケーションが求められます。
 人間には、多少の異常があってもそれを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする働きがあります。これを正常性バイアスと呼びます。心が過剰に反応して疲弊することを防ぐ働きですが、対応が遅れたり、対応自体を忌避する結果に繋がることがあります。正常性バイアスを取り除くためには、単にデータを示すだけでは足りません。書き手側と読み手側のギャップを埋めるストーリーを考えて、コミュニケーションに取り組みましょう。

実習課題:安全性に関する報告書のストーリー作成

EE02実習-200610.docx

EE02実習教材_はじめての工学倫理_p046-049_p231.pdf

第9回

チャレンジャー号事件
工学コミュニケーションの基礎(EE0

黒田 聡

  

 エンジニアには組織の一員としての行動が求められます。この立場において人間に対する配慮、つまり工学倫理を貫くには、コミュニケーション巧者である必要があります。ここに工学倫理と工学コミュニケーションの密接な関係があります。
 エンジニアが生み出す製品は、エンジニアの手を離れて使われます。エンジニアは、設計段階から、使う可能性のある人を想像し、リスクを想定し、これを決定権者が理解できるように可視化して伝えなければなりません。これまで学んだコミュニケーション技法を活用して描いてみましょう。

実習課題:シュレッター事故再発防止のための提案書 ストーリーを描く

EE01実習-200604.docx

EE01実習教材_はじめての工学倫理_p002-021_p229.pdf

第8回

社外メール文
工学コミュニケーションの基礎(TW08)

黒田 聡

  

 社外メール文は、長期保存も想定されるフォーマルな連絡文書です。宛名を適切に記し、発信者を明瞭に伝えなければなりません。読み手と書き手の関係に基づく言葉遣いも必要です。チャットやSNSのコメントとは区別して書きましょう。また、メールは封書ではなくハガキに例えることができます。意図した読み手以外の人に読まれる可能性を考慮して書く必要があります。
 社外メール文は、書き手の意図と読み手の解釈が合致した時に、送信目的が成立します。目的を達成するために書く文書という点で、提案書や障害報告書と共通点があります。これまで学んだコミュニケーション技法を活用して書いてみましょう。

実習課題:顧客名簿掲載者限定営業再開を知らせる社外メール

TW08実習-200528.docx

第7回

障害レポート
工学コミュニケーションの基礎(TW07)

黒田 聡

  

 障害レポートを書く目的は、障害発生の事実と原因、および再発防止策を記録し、関係者に共有することです。再発防止策の提案を意図する点において提案書と似たユースケースを持ち得ますから、作成技術にも共通するところがあります。ただし、障害レボートでは事実と意見の書き分けを強く求められることに留意して書きましょう。
 日本特有の社会規範において、障害レポートの目的に読み手に対する謝罪意思の表明が加えられることがあります。必要な場合には考慮しなければなりませんが、この社会規範は海外では一般的ではありません。外資系企業や外国籍の読み手を想定する場合など、日本国内でも避けた方がよい場合があります。

実習課題:再発防止策の提案を意図する障害報告書

TW07実習-200521.docx

第6回

提案書
工学コミュニケーションの基礎(TW06)

黒田 聡

  

 提案書では書き手の目的達成が重んじられます。提案書を書く目的は、読み手の理解や行動に変化を与えることだからです。提案対象(読み手)の現状と提案書の目的(書き手が設定したゴール)とのギャップを把握し、これを効果的に埋めていくストーリーを組み立てて、提案書を作成することがポイントです。
 コミュニケーション技法には、目的に合わせて使い方に幅を持たせる汎用性があります。論文、マニュアル、提案書、報告書、連絡文など、作成物毎に異なる目的を理解して、目的に即して表現術を使いこなしましょう。

実習課題:自分の研究テーマの宣伝を意図する提案書

TW06実習-200514更新版.docx

第5回

ユーザーマニュアル・トリセツ(取扱説明書)の実践
工学コミュニケーションの基礎(TW05)

黒田 聡

  

 マニュアルは複数の読み手を想定することがあります。購入者と使用者が異なる場合や、管理者がマニュアルを拠り所として作業者にタスクを進めさせる場合には、読み手ごとに、目的ごとに、見出しを分けたりブロック化して書きます。
 取扱説明書と業務手順書は、書き手側、読み手側のそれぞれに役立つように作ります。書かれたとおりにタスクをすすめて怪我をした場合は製造会社や業務管理者に責任が生じることがあり、書かれた通りに使用せずに製品が壊れた場合は製造会社の免責になることがあります。リスク(不確かさの影響)を伝え、安全確保に必要な情報を過不足なく提供する役割を果たせるように作りましょう。

実習課題:マスクの取り扱い方

TW05実習-200507.docx

興味を持った方は、下記も読んでみましょう。
テクニカルコミュニケーションの基礎(2019)第2回
参照箇所は教材B:リスクと安全情報を伝える取扱説明書の例示

テクコミュ190418_教材ABC.pdf

興味を持った方は、下記も読んでみましょう。
テクニカルコミュニケーションの基礎(2019)第7回
参照箇所は教材B:説明書の不備が引き起こす事故の例示

テクコミュ190606_教材ABC.pdf

第4回

読みやすさを高める文章フォーマット
工学コミュニケーションの基礎(TW04)

黒田 聡

 文章フォーマットを整える目的は、読み手に伝えるべき内容を効果的に見せることです。表現に統一感や一貫性を持たせると、読みやすくなります。意味の区切りを視覚的に表現すると、書き手の意図どおりに文脈を読み取りやすくなります。
 人間の認知では①色、②視覚、③論理の順に影響力が強くなります。①と②で刷り込まれた認知を、③で修正することは苦手です。逆に①で重要性を示し、②で関係性や文脈を示しておくと、③を理解しやすくなります。認知の仕組みを活用して文章フォーマットを整えることを、コミュニケーション技法では表現設計と呼びます。意識して教科書の練習問題を書いてみましょう。

興味を持った方は、下記も読んでみましょう。
テクニカルコミュニケーションの基礎(2019)第5回
参照箇所は教材B:事例
参照箇所は教材C:副教材

テクコミュ190523_教材ABC.pdf

第3回

読み手に伝わる文章のテクニック
工学コミュニケーションの基礎(TW03)

黒田 聡

  

 読み手に伝わる文章を書く目的は、読み手の理解や行動に変化を与えることです(書き手側視点)。娯楽目的で読む文学作品とは違って、技術文書やマニュアルは目的達成に必要な意思決定や手順理解に役立てる手段として読まれ、役に立てば満足します(読み手側視点)。
 書き手と読み手、双方の目的を達成できる文章を書くテクニックの集大成がテクニカルライティングです。教育訓練で習得できる技術として産業人も学んでいます。指定教科書や下記教材に書かれているテクニックを使って、目的を果たせる文章を書いてみましょう。

興味を持った方は、下記も読んでみましょう。
テクニカルコミュニケーションの基礎(2019)第4回
参照箇所は教材Cの7ページから18ページ:

テクコミュ190516_教材ABC.pdf

第2回

わかりやすい文章を書くテクニック
工学コミュニケーションの基礎(TW02)

黒田 聡

 文章は書き出しが大事です。要点をつかんでいて簡潔であること、読み手の興味をそそる内容が盛り込まれていることが求められます。受け身の姿勢をさらけ出す書き出し、読み手にはわかりきった内容の書き出しは、読む気を損ないます。感情を露わにした表現、疑問形を書き出しに用いることも、文章では好まれません。
 わかりやすい文章を書くテクニックの王道は、誰が読むのかを意識することです。読み手を具体的にイメージして、読み手が期待することを考えて書きます、関係の薄い内容を省き、読み手が求める内容を補強する視点で書いてみましょう。

興味を持った方は、下記も読んでみましょう。
テクニカルコミュニケーションの基礎(2019)第4回
参照箇所は教材C:

テクコミュ190516_教材ABC.pdf

第1回

ロジカルライティングとテクニカルライティング
工学コミュニケーションの基礎(TW01)

黒田 聡

 テクニカルライテイングは、技術文書(開発仕様書や取扱説明書など)における表現術として、企業で広く使われています。書き手と読み手の間に双方またはどちらかが知らない概念・言葉が含まれる情報を書くときに用います。
 テクニカルライテイングを用いて書かれた文章は、図表などのビジュアル要素と組み合わされて、理解しやすい形に配置され、読み手に届けられます。ビジュアル化や情報配置の方法、文書としての品質を確保するための工程を包含した表現技法を、テクニカルコミュニケーションと呼びます。

興味を持った方は、下記も読んでみましょう。
テクニカルコミュニケーションの基礎(2019)第1回
参照箇所は教材C:5.テクニカルコミュニケーションとは
テクコミュ190411_教材ABC.pdf

使い方、質問の仕方

講義のタイトルをクリックすると、講義のページが表示されます。
ページの下に質問欄があります。

質問と名前を入力して、「質問を送信」ボタンをクリックします。
講師あてに質問が送信されます。
※質問は、講師の許可によって受講者全員に表示されます。

「工学コミュニケーション」をクリックすると、講義一覧に戻ります。

資料:テクニカルコミュニケーション(表現術)2019

2019年に全7回の講義を行いました。

第1回(2019年4月11日)
テーマ:テクニカルコミュニケーションとは何か需要、社会的貢献、技術、適⽤例から学ぶ
相手が知りたいことに応える技術「テクニカルコミュニケーション」の概要を事例を通じて学ぶ。また、AI 活用が進む時代の知的業務に携わる産業人に求められるコミュニケーション技術に触れるグループ討論を通じて、本授業を学ぶ意義を確認する。

テクコミュ190411_教材ABC.pdf

第2回(2019年4月18日)
テーマ:テクニカルコミュニケーションとは何か需要、社会的貢献、技術、適用例から学ぶ
相手(クライアント)が知りたいことに応えるテクニカルコミュニケーション技術の特性を、情報源、社会的役割、技術、適用対象の観点から学びます。2回目の授業では、アカデミックライティングとの対比を通じて、産業人に求められる技術に触れます。

テクコミュ190418_教材ABC.pdf

第3回(2019年5月9日)
テーマ:読み手(ユーザー)指向の徹底。プロセスから学ぶ。
相手(クライアント)が知りたいことに応えるために欠かせない読み手(ユーザー)指向の徹底を、情報をつくるプロセスから学びます。3回目の授業では、テクニカルコミュニケーションが⼯学に属する理由と、なぜ産業人に求められる技術なのかにも触れます。

テクコミュ190509_教材ABC.pdf

第4回(2019年5月16日)
テーマ:読み手(ユーザー)指向の徹底。求められるのは5W1H+1E(Experience)。
相手(クライアント)が知りたいことに応えるために欠かせない読み手(ユーザー)指向の徹底を、情報の構成から学びます。4回目の授業では、テクニカルコミュニケーションに固有の「体験価値(Experience)の追求」について、事例を通じて触れます。

テクコミュ190516_教材ABC.pdf

第5回(2019年5月23日)
テーマ:表現設計のコツ。認知科学の視点から学ぶ。
相手(クライアント)が知りたいことに応える情報のつくりかたを、認知科学の視点から学びます。5回目の授業では、作り手側の意図と読み手側の解釈の乖離を認識して、これを解消するための表現設計のコツについて、事例を通じて触れます。

テクコミュ190523_教材ABC.pdf

第6回(2019年5月30日)
テーマ:ライティングのコツ。情報デザインの視点から学ぶ。
相手(クライアント)が知りたいことに応える情報のつくりかたを、情報デザインの視点から学びます。6回目の授業では、必要な内容が効果的に読み手に届くように情報を整理するためのライティングのコツについて、事例を通じて触れます。

テクコミュ190530_教材ABC.pdf

第7回(2019年6月6日)
テーマ:コンプライアンスでリスク低減。知的財産権だけではない法令要求を学ぶ
相手(クライアント)が知りたいことに応える情報のつたえかたを、コンプライアンスの視点から学びます。7回目の授業では、コンプライアンスとそのリスクを物語る事例に触れて、その遵守には欠かせないプロセス「校閲」を学びます。

テクコミュ190606_教材ABC.pdf